「すべての悩みは対人関係の悩みである」
「すべての悩みは対人関係の悩みである」
アドラー心理学の根底を流れる概念だそうです。
職場の人間関係がきつい、学校に居場所がない、顧客相手に気疲れする、好きな人の気持ちがわからなくて不安、家族と口論してしまう、些細な事で友達と気まずくなった、・・・
ためいきがでるような対人関係の悩みですが、大なり小なり、こういった経験は誰にもあるのではないでしょうか。
きっかけはささいなことだったり、ほんの少しの誤解だったり。
こういった対人関係のトラブルはお互いに「理解」しあえていないことが原因であることが多いようです。
相手のことが少しでも理解できたら、悩みは軽くなるかもしれません。
また、自分の性格タイプを把握することで自らを客観視できれば、悩みが悩みでなくなることもあります。
そんな人の性格を理解する方法があればよいと思いませんか?
この記事では、人の性格を理解する方法として、エニアグラムの9つの性格理論を紹介します。
エニアグラムを学ぶことで、自分に対する理解が深まるだけでなく、他人を理解しやすくなる、という効果があります。
エニアグラムを知って、人の性格タイプを理解し、自他の理解を深め、対人関係の悩みから解放されましょう。
エニアグラムについて
エニアグラムは、もともとギリシャ語で「9の図」という意味を持つ幾何学図形です。
現在ではこの幾何学図形をシンボルとした性格論に発展しています。
それは「人間は生まれながらに9つのタイプに分けられる」という考え方です。
エニアグラムを知ることで、自分に対する理解が深まります。
自分の性格の特徴がわかると、自己理解が深まります。自分を深く理解することで、より成長をすることが可能です。
自分の得意なことと苦手なことがわかり、人とスムーズにコミュニケーションをとることができるようになります。
また、他人のエニアグラムを知ることで、相手への理解を深めることもできます。
相手のエニアグラムを把握していれば、性格の特徴がわかるのでよりコミュニケーションをとりやすくなります。
誤解から生じる悩み
「人生の悩みのほとんどは、誤解から起こるのじゃないかと思うわ」
名作「赤毛のアン」の有名な言葉です。
***
生まれも育ちも違う者同士、価値観も多種多様なので、すべての人と理解しあうことは難しいかもしれません。
しかし、相手の理解しがたい言動の背景を少しでも理解できたら、どうでしょうか。
何故あの人は機嫌が悪いのか?
何故あの人は他人を出し抜こうとするのか?
何故あの人は自分だけが特別だと思っているのか?
・・・
人の言動の背景には、その人自身の性格タイプが大きく関わっています。
同じ出来事でも、性格タイプによって受けとらえ方が大きく異なるのです。
エニアグラムでは、人の性格タイプを9つに分けています。
書籍によって表現方法が若干異なりますが、こちらの記事では「9つの性格」鈴木秀子著(PHP出版)を参考に以下のように表現します。
タイプ1【完全でありたい人】
タイプ2【人の助けになりたい人】
タイプ3【成功を追い求める人】
タイプ4【特別な存在であろうとする人】
タイプ5【知識を得て観察する人】
タイプ6【安全を得て慎重に行動する人】
タイプ7【楽しさを求め計画する人】
タイプ8【強さを求めて自己を主張する人】
タイプ9【調和と平和を願う人】
では各タイプによって、感じ方がどのように異なるのかシミュレーションを通してみてみましょう。
裏切りを目の当たりにしたとき
「9つの性格」鈴木秀子著(PHP出版)によるシミュレーションが大変リアルでわかりやすいので一部抜粋します。
以下のシーンを想像してみてください。
ところがある晩、その部下が、あなたの同期のBと仲良くお酒を飲んでいるところを目撃してしまいます。Bはあなたのライバルであり、あなたは敵対心をもっています。
タイプ1【完全でありたい人】は、
ショックを受けて気づかれないようにその場を去る。裏切られたような怒りと嫉妬心を感じ、私の悪口を言っているに違いない、と思う。
落ち着いた後は、自分に落ち度があったのではないか、と自責の念も抱く。ことの真相は知りたいが、態度には出さず、その後いつも通りAと付き合う。
内面ではAと壁をつくり、用心深くなり、同時に自分の心の狭さを責める気持ちも抱く。
タイプ2【人の助けになりたい人】は、
AとBを目撃したとたんに裏切られたと感じる。あんなによくしてあげたのに、という怒りと、私よりBが良いのか、というさみしさを感じる。
平静を装うが、心は煮えたぎった状態。翌日には落ち着くが、残った怒りを嫌味を言うことで少しずつ小出しにする。裏切りに対する怒りは消えない。
タイプ3【成功を追い求める人】は、
まずいところに来てしまった、と感じる。自分の知らないところで進行していたことへの疎外感と、自分に不満があるなら言ってくれたらいいのに、という不満を抱く。
もし彼らに見つかれば、さわやかなムードで接し、饒舌に話し、朗らかさを演じる。自分はこだわっていない、と自分に言い聞かせる。
タイプ4【特別な存在であろうとする人】は、
まず嫉妬心、怒り、悲しみなどが襲うが、すぐに「やっぱり」と感じる。人は心変わりをするのが当然だと思っていたのに、Aだけは別だと考えたとこと自嘲する感覚。
同時にAへの接し方がまずかったのかと自責的な原因考察を行い、確かにBの方が魅力があるかもしれないといった想いを抱く。
タイプ5【知識を得て観察する人】は、心にやや痛みを感じるが、何らかの事情があるかもしれないので、いきなり感情的にならないようにする。自分は自分、人は人、と言い聞かせ、感情を引きずらない。
翌日は、しこりは残るが、何もなかったかのようにAと接する。Aの意志を尊重しようとする。
タイプ6【安全を得て慎重に行動する人】は、
驚き・不安に襲われ、状況を悪い方向に想像し、自信を喪失する。相手が気づいて同席を求められれば同席する。
翌日以降も事情を聞くことはできず、自信喪失と顔を合わせることへの恐怖感にさいなまれる。Aと距離を置き、裏切りが明白な場合はあきらめる方向に切り替える。
タイプ7【楽しさを求め計画する人】は、
一瞬、不快感がよぎるが、すぐに、偶然で起こったことだろう、気にしない気にしない、と言い聞かせて、気持ちを切り替える。
もともと大して敵対心を持っていないので、気楽に考えることができる。もし本当に嫌な相手なら軽蔑の気持ちをもっているので、そいつと付き合っているAも同類と考えて気持ちの整理をつける。
タイプ8【強さを求めて自己を主張する人】は、
寝返ったか否か、という視点。寝返りが明らかな場合は激しい怒りが湧きおこる。寝返ったAのことはスパッと切り捨てる。
もし今後も自分の下で仕事をすることになれば冷遇する。裏切りへの当然の罰と考えるので、感情は引きずらない。
タイプ9【調和と平和を願う人】は、
ショックを受け、気づかれないようにその場を離れる。
私の何が悪かったのか、Aと良い関係というのは私の思い込みだったのか、Aは迷惑だったのかもしれない・・・などと思いをめぐらし、私の力不足から私にない魅力をもつBに接近したのだ、と結論を出す。見放されたさみしさは続くが、仕方ないとあきらめ、平静にAと接し、AとBの悪口を言わないようにする。
***
いかがでしょうか。
同じ状況でもタイプによって感じ方、受けとらえ方、感情の処理の仕方が異なることがよくわかります。
自分の感じ方に近いものはありましたか?
中には自分では到底ありえない感じ方もあったことでしょう。
このようにタイプの違う人たちが社会の中で深く関わりあっています。
さまざまな思考や感情が入り乱れているのです。
そう思うと、誤解が生じない方が不思議ですよね。
まとめ
このページでは簡単なシミュレーションでご自分のタイプを想定できるようになっています。
実際のエニアグラムのタイプ診断では、質問に答えていくことでより正確な診断をすることができます。
また、それぞれのタイプ毎に、衝き動かす「囚われ」があり、その囚われに気づくことで自分にも優しくなれるといいます。
9つの全く違うそれぞれの思いを知ることで、お互いに尊重することができますし、
エニアグラムを知ることで、自分を活かし、他者も活かすことができるようになります。
相手の言動にイライラしたり、我慢するのではなく、相手を理解することで相手の思いを尊重し、自らも不要なストレスを手放しましょう。
「本当の自分」がわかり、近くにいる「困った人」のことが理解できるエニアグラム。
人付き合いに疲れた人にとっての妙薬となるかもしれません。
本記事では「9つの性格」鈴木秀子著(PHP出版)を参考にしました。
たいへん詳しく解説されており、エニアグラムの教科書ともいえるような素晴らしい本です。
相手の性格を理解し、対人関係のストレスを軽減する方法として、エニアグラムを是非活用してみてください。